「野球肘」について~その1 2016.8

 こんにちは。理学療法士の澤木です。今回は私の担当ということで、当院にも多く来院される野球少年にみられる「野球肘」についてお話ししたいと思います。私も小さい頃から野球をはじめ、小学生の時にこの「野球肘」になり、大変苦労しました。そんな経験などもふまえてお話ししたいと思います。 まず野球肘とはどのような状態をいうのかと言いますと、「投げる動作により痛みが生じ、投げられない状態」のことを言います。主な症状としては、 ① 肘の曲げ伸ばしができない(関節可動域制限) ② 肘の部分を押すと痛い(圧痛) ③ 投げると痛い(投球時痛) という症状がみられます。私も3つともあり、「肘がまっすぐ伸びず、深く曲げることも出来なかった」のを覚えています。また、投げると痛くて、監督、コーチにバレないように隠しながらやっていたのを思い出します( ;∀;) 原因としては様々でありますが、一般的によく言われる「投げ過ぎ」によるものがあり、肘に繰り返し負担がかかることで関節が壊れてしまうという原因となります。またこの野球肘は痛む部位で分けられ、①内側型、②外側型、③後方型と3つに分けられます。 では、投げる動作でどのような力が加わるのかというと… 投げる動作の中で腕がしなる瞬間、つまり腕が一番加速する瞬間があると思います。その時に肘の関節を外側へ反るストレスが加わります。これにより関節の内側には引き離す力が働き、外側には関節の骨同士をぶつけ合うような力が加わります。この力が繰り返しかかることで関節を壊し、骨に障害が発生してしまうのです。この内側の引き離す力は、内側にくっついている靭帯や筋肉が関節から引き伸ばされ、骨の付着部が剥がれてしまい痛みが生じます。これが内側型です。小学生~中学生くらいの選手の場合、多くの場合がこの内側型です。先程の①関節可動域制限、②圧痛、③投球時痛の3つの症状が伴うので、この症状があるかどうかをチェックすることが必要です。 ① 関節可動域制限:両肘をまっすぐ伸ばす、または曲げてみて左右差がないか? ② 圧 痛:内側の骨が出っ張っている部分を軽く押して痛くないか? ③ 投球時痛:投げる時に肘の内側が痛くないか? 一つでも症状がある場合は肘に負担がかかっているので要注意、3つともある場合は医師の診察をお勧めします。 一方、外側型は骨と骨がぶつかり合うような力が加わるため、骨自体に傷が付いてしまい軟骨を痛めてしまいます。外側型は痛みが出づらく、症状が進行してから痛みが出てきてわかる場合が多いため、治療に難渋することがあります。厄介なのはこの「症状が進行してから痛みが出てくる」ということです。最悪の場合、手術が必要になったり、投げ手を変更することが必要になったりしてしまします。今日、この外側型の野球肘を減らす活動として、全国的に行われるようになってきた「野球肘検診」があります。これは、超音波検査機器を使って肘の内部を検査し、痛みの出ない早期に発見し、治療を行おうというものです。様々な団体や医療機関で行われ、私がサポートしている少年野球連盟でも年1回実施し、毎年の検診で数名の外側型の選手が見つかり、早期発見、早期治療を図っています。 このように肘を反るというストレスが内側型、外側型の原因となっています。ただ、野球はボールを投げることでプレイが成り立つので、重要なプレイでもあります。繰り返しのストレスで野球肘になるため、「どうすれば肘にストレスがかからない投げ方になるのか」という事も考えていかなくてなりません。この投げ方については次回にお話ししたいと思います。 野球肘について原因と症状についてお話してさせていただきました。あなたの肘は大丈夫ですか?まずは肘に負担がかかっていないか、野球肘になっていないかをチェックすることから始めてみてはいかがでしょうか?
澤木弘之
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