投稿日時:2023/04/21(金) 06:01
令和5年4月21日 2023年
ドクター松林の「待ったなし」
「東京の街を彷徨う」
―いざ、新宿歌舞伎町へーその3
●歌舞伎町は特別な場所であり僕たちにとってはパリかニューヨークだった。だから待ち合せも慎重にしなければいけない。なんせその当時は、携帯もピッチもポケベルもないのだから。考えられますか、そんな生活。歌舞伎町へは次の日もう一人仲のいい同級生と落ち合って合流して食事して遊ぶことになっていた。こうした重要な待ち合せの時は、少なくとも家を出ると連絡手段は公衆電話しかないので、できるだけ中継地点を設けることにしていた。今回はケー坊のおじさんの店だ。
●でも普段中継地点がすんなり設けられることは少なかった。なぜなら、できれば実家は避けたい、親が出るので当然のこと。では他の友達の家という風にはいかない。その友達に誘わなかった理由を説明しにくいからだ。だから普段の待ち合わせは一か八かの要素が満載だった。そのため僕たちは何らかの原因で30分待っても来なかった場合、その日のオプションから外すというルールを作った。でなければ他のみんなの時間が台無しになってしまうからだ。
●今は昔「待ちぼうけ」という言葉もなくなっていくことだろう。昔はよくあった話だ。 「待ちぼうけ」特に彼女とのデートの待ち合わせの時この言葉は鮮烈に悲しみを帯びて心 に突き刺さる。これは1980年代のお話、雪の降り続く中、4時間も彼女を待ったことが ある。最初はちょっと遅れるのかなだが、だんだん心配になってくる。事故にあったので はないか、急病ではないか、でも確認できない。家に電話するときっと怖いお父さんがで るかもと頭をよぎる。さらにもし振られたとしたなら、電話をした時点で決定するではな いか、それは避けたい。ならばまだこの冷たい雪に打たれていた方が100倍ましだ。そう して暖かそうな喫茶店の中をのぞきながら、僕はマッチ売りの少女の話を思い出す。悲し い話だ。最後の1本のマッチをつけた時少女はどんな気持ちだったのだろう。僕は冷たい 窓を手で拭きながら中の暖かそうなコーヒーを飲む人たちを眺め煙草にマッチで火をつ けた。ふーっと空に向けて煙を吐くと、冷たい空気の中白い吐息と区別できないまましん しんと降る雪の中に消えていった。煙は星まで届くのだろうか、心の中も冷たく凝固し宇 宙の中で僕だけいっぱい独りぼっちだった。
●在宅診療の老舗開業以来29年
ドクター松林の「待ったなし」
「東京の街を彷徨う」
―いざ、新宿歌舞伎町へーその3
●歌舞伎町は特別な場所であり僕たちにとってはパリかニューヨークだった。だから待ち合せも慎重にしなければいけない。なんせその当時は、携帯もピッチもポケベルもないのだから。考えられますか、そんな生活。歌舞伎町へは次の日もう一人仲のいい同級生と落ち合って合流して食事して遊ぶことになっていた。こうした重要な待ち合せの時は、少なくとも家を出ると連絡手段は公衆電話しかないので、できるだけ中継地点を設けることにしていた。今回はケー坊のおじさんの店だ。
●でも普段中継地点がすんなり設けられることは少なかった。なぜなら、できれば実家は避けたい、親が出るので当然のこと。では他の友達の家という風にはいかない。その友達に誘わなかった理由を説明しにくいからだ。だから普段の待ち合わせは一か八かの要素が満載だった。そのため僕たちは何らかの原因で30分待っても来なかった場合、その日のオプションから外すというルールを作った。でなければ他のみんなの時間が台無しになってしまうからだ。
●今は昔「待ちぼうけ」という言葉もなくなっていくことだろう。昔はよくあった話だ。 「待ちぼうけ」特に彼女とのデートの待ち合わせの時この言葉は鮮烈に悲しみを帯びて心 に突き刺さる。これは1980年代のお話、雪の降り続く中、4時間も彼女を待ったことが ある。最初はちょっと遅れるのかなだが、だんだん心配になってくる。事故にあったので はないか、急病ではないか、でも確認できない。家に電話するときっと怖いお父さんがで るかもと頭をよぎる。さらにもし振られたとしたなら、電話をした時点で決定するではな いか、それは避けたい。ならばまだこの冷たい雪に打たれていた方が100倍ましだ。そう して暖かそうな喫茶店の中をのぞきながら、僕はマッチ売りの少女の話を思い出す。悲し い話だ。最後の1本のマッチをつけた時少女はどんな気持ちだったのだろう。僕は冷たい 窓を手で拭きながら中の暖かそうなコーヒーを飲む人たちを眺め煙草にマッチで火をつ けた。ふーっと空に向けて煙を吐くと、冷たい空気の中白い吐息と区別できないまましん しんと降る雪の中に消えていった。煙は星まで届くのだろうか、心の中も冷たく凝固し宇 宙の中で僕だけいっぱい独りぼっちだった。
●在宅診療の老舗開業以来29年
