投稿日時:2022/01/21(金) 03:48

令和4年1月21日 2022年
ドクター松林の「待ったなし」

「東京の街を彷徨う」  
その8  
 ―恐怖の回転ずし屋ー

●この回転ずし事件はこれで一件落着かと思えたが、実際はそうではなかった。サーファーカットの若い学生さんらしき爽やか系男性に対して、高島田さんを除く店の他の客は同情と応援したい気持ちに駆られた。それは、高島田の髪結いの70代前後のやや痩せ気味で目元もキリリとした面長で品はいいがきつそうな高島田さんの学生さんへの一撃で芽生えた、「なんだか学生さんがかわいそうだ。そして私たちはあなたの味方だ」という共感と連帯感があった。  
●サラリーマン風の男たちはおもむろにタバコに火をつけて、何とかその場のストレスと雰囲気を緩衝しようとしていた。老夫婦の旦那さんは、少しせき込みながら高島田さんの方をじろりとにらみつけたが、高島田さんは何も気にしていない風でおいしそうにさっきのイカを食べていた。私はかなりお腹いっぱいになってはいたが、なんだか席を立ちづらくなっていた。そんな雰囲気だった。皆ここで席を立つと高島田さんの思い通りではないかという認識で一致していた。  
●ここはその若い学生さんのためにも高島田さんが席を立って店を出るまでは、席を立てないという感情で一致していた。そして私たちは高島田さんの前を皿が一回通るのを確認してから皿を取るという原則を守りながら箸を進めたのである。それが学生さんを救う唯一の方法であると確信して。時は進み、突然高島田さんは席を立ち「お勘定お願いしますわ」と言って店を後にした。残された私たちは妙な虚無感と安ど感が混入した感覚の中、サラリーマン風の男たちはまたタバコに火をつけた。  

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仁整形外科  
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