私の在宅医療(往診)のルーツ7

 こうしてタクシーの運転手さんを通して私は、会ったことのない祖父保太郎と触れ合うことができた。それまで祖父保太郎のことは写真で観たり両親から話を聴いただけだったが、初めて私は祖父の生きた魂に出会ったのだと感じた。
 そして祖父は私にこう語りかけているようだった。「保智君(私の名)、医者をするということはこういうことなんだよ。いつまでも人の心に残るような真実の医療をしなさい」と。
 私は感動と祖父に会えたという思いで涙がこぼれ落ちそうになった。そこであえてタクシーの中で上を向いた。『上を向いて歩こう』という坂本九のヒット曲の歌詞のとおりに。しかし無駄だった。涙はあふれ、どんどん頬を流れ落ちた。