私の在宅医療(往診)のルーツ

 空港から乗ったタクシーの運転手さんが、実家の松林内科医院を知っていたことにも驚いたが、何より私の実家に足を向けて寝たことがないほど感謝しているということにびっくりしました。その運転手さんはだいたい60歳くらいの初老の方で、時折停車中などに後ろを振り返りながら話始めました。

 「実は私の母はあなたのおじい様の先生に命を救われました。あれは私がまだ子供の頃です。母は重い病気にかかりましたが、その当時家は貧乏でとても治療費など払える状況にありませんでした。どこの診療所に行っても断られて絶望していたところに松林先生のお噂を聞いたのです。松林先生はお金のない人でも診療や往診してくださるという話です。私は父に連れられて先生の診療所に行ったことを今でも覚えています。事情を話すと院長先生はこう言われました。『すぐに往診して治療しましょう。お金なんてなくてもいいから』私たちはびっくりしました。嬉しくて涙がこぼれ落ちました。
 そうして先生の懸命な治療のおかげで母は助かりました。私は子供ながら嬉しくて嬉しくて仕方ありませんでした。そのようにしてくださったのが、あなたのおじい様なんです。ここでこうしてお孫さんにお会いできるとは、ほんとうに嬉しい気持ちでいっぱいです。」

 私はずっと茫然と聞いていたが、気づくと目頭が熱くなっていました。