生きている間は食べる物だけには困らせない

① これは父が母に贈ったプロポーズの言葉である。この言葉を聞いたとき、「えー」と思った。なんとロマンチックのかけらもないことか。
② でもそのうち目頭が熱くなり、涙がこみあげてきた。両親が結婚したのは戦後の混乱期からやっと復興期に入った昭和35年のことだ。その当時は戦前、戦中、戦後とも食べ物がなく、ぺんぺん草すら食べていたような時代。しかも広島には原爆が落ちた。草すら生えていなかった時代。この言葉はどんな言葉よりも心強く、たくましく、安心を母に与えてくれたことだろう。
③ もしかしたら、「君をずっと幸せにしたい」「永遠に愛している」などのロマンチックな言葉よりも遥かに心の底にズシンと響くプロポーズかもしれない。父は未だにこのときの約束を守っている。